外張り断熱の本当の価値って?

「外張り断熱」

これは数年前からもCMなどでやっているせいか、一般的にも浸透している言葉です。これはどう言うものかと言いますと、簡単に言えば「外壁の内側」に張ったり、吹き付けていた断熱材を、 「外壁の外側」に設置しよう、と言うものです。

外張り断熱の効果

それでは、断熱材を外壁の内側でなくて、外側に設置することで何が変わるんでしょうか?

「設置場所が違うだけなら大した違いは無いのでは?」

と思う人が多いのではないかと思います。 しかし、実は色々な面で違いが生まれます。

内張り断熱と外張り断熱の違いから見る価値

まず、内張り断熱ですが、これは昔から現在でも最も多く行われている方法で、木造でも鉄筋コンクリート造(RC造)でも鉄骨造でも採用されいています。

1戸建ての家だけに限らず、分譲マンションや 店舗ビルなども、大抵はこのやり方で断熱材が施されています。

ですので

  • レベルの低い工法だ
  • 安い工法だ

と思われていたとしたら、それは大きな勘違いなんです。

内張り断熱の特徴(金額と施工性)

まず、内張りで断熱をする場合は、屋内に断熱を施工しますので、原則的に水に弱い、ですとか、強度が必要だ、などの能力は全く必要とされません。

ですので、断熱材自身の開発や製造費用などが、極端な話、安くて済むわけです。求められるのは原則論、あくまでも

断熱性能

だけだからです。

とは言え、室内に断熱材を設置してそれで仕上がりです、と言うわけには行きませんので、その上に大抵は石膏ボードを設置して、その上にビニルクロスを貼ったり、タイルを張ったりなどの「仕上げ」を施してから完了となります。

外張り断熱の特徴(金額と施工性)

それに引き換え、外張り断熱は、外壁の外側に設置するわけですから、水や紫外線に弱いわけには行きませんし、 時に台風や大雪なんてこともありますので、それ相応の強度も求められます。

必然的に

断熱性能 + 強度 + 耐久性

を求められますので、 開発にも製造にもお金がかかってしまうことは想像が出来ます。そうなりますと、当然単価も高くなります。

そして、外装の仕上材も、この外張り断熱材に適合できるか?と言う問題があります。例えば、外壁仕上げとして、非常に重い石貼にしたい場合、なかなかこれに対応できる外張り断熱材は少ないのではないか、と思います。当然、それだけ特殊な建材ということになり、価格もかさみます。

このように、ここまで読んできますと「外張り断熱はデメリットばかりでは?」と思ってしまいます。

なぜ、外張り断熱がすごいのか?

それでは、ここからは、外張り断熱のスゴイところ、について書いていこうと思います。

建物というものは、常に自然の猛威にさらされています。

  • 夏は炎天下の直射日光に。
  • 冬は吹きさらしの寒さに。

それらから生活を守るための「断熱」なのではありますが、ここでそのメカニズムを改めて整理しておこうと思います。わかりやすいように夏の炎天下を例として説明します。

夏の炎天下時のそれぞれの状況は、上の図のようになります。

ここで、建物に対して起こることを整理していきます。

外張り断熱の場合

まず、日射によって、外部の断熱材が熱せられていきます。

それによって、断熱材が蓄熱していきます。しかし、断熱材ですので、内側には熱はあまり伝導しません。なので、建物の壁自身は熱を帯びない こととなります。

熱くなる部分と熱くならない部分を整理します。

  • 熱くなる部分 ・・・ 断熱材
  • 熱くならない部分 ・・・ 外壁、室内

となります。

そして、夜間になりますと、蓄熱された断熱材徐々に冷えていきます。元々熱くなった断熱材のボリュームはそこまで大きくないので、蓄熱量もそこまで大きくなく、同時に、その内側にある建物の壁自身は、もともと熱を遮断された内側にありますから、昼から夜まであまり温度は変わらずに推移します。

内張り断熱の場合

まず、日射によって、外壁が熱せられていきます。

そして、この外壁が蓄熱していきます。木造であれば木部が、 鉄筋コンクリート造(RC造)であればコンクリート部分です。

これらは当然、熱を帯びれば少しづつ内部に熱を伝導していきますので、いずれは、その熱が断熱材に到達します。そして次は、断熱材が熱を帯びますが、そこで熱が遮断されます。

熱くなる部分と熱くならない部分を整理します。

  • 熱くなる部分 ・・・ 外壁、断熱材
  • 熱くならない部分 ・・・ 室内

となります。

そして、夜間になりますと、外壁の温度は徐々に下がり始めますが、熱くなった「外壁+断熱材」は、外張り断熱の断熱材のみの時と比べ、ボリュームが大きくなります。

当然、蓄熱量も大きいので、 冷えるまでに 時間がかかり、夜半まで室内に熱を伝導し続けることとなります。ですので、室内はクーラーをオンにしていないと、暑く感じることも 多くなるということです。

上記のように、結果的には外張り断熱に比べて、内断熱の場合は、 室内が暑くなりやすいという 欠点があるのです。

そしてもうひとつ、

冬の結露の問題

と言うものがあります。

冬の場合、内断熱ですと外部の冷気の遮断層が、 壁体のかなり内側に近い部分になってしまうので、部屋内の壁が冷たくなりがち なんですね。 それによって、結露が起こるわけです。

これが外断熱であれば、冷気の遮断層が一番外側ですので、 単純に部屋内の壁は冷たくなりにくいので結露も起こりにくいというわけです。

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内装仕上げの自由度

最後に挙げるメリットは、些細なことのようですが、案外重要なこととなります。

外張り断熱にすることで、内装仕上げについては、やろうと思えば「仕上げなし」 つまり、もし鉄筋コンクリート造(RC造)であれば「コンクリート打ち放し」と言う選択ができます。

内装のコンクリート打ち放しとは、実はなかなか条件が厳しく、特に外壁の内側を コンクリート打ち放しとする場合は、外張り断熱はどうしても一番の選択肢となります。

デザイン性も高く、カッコいいというだけではありません。内張り断熱で必要だった、

石膏ボードや仕上げ材

が必要なくなるので、その分コストが安くなる、とも考えられのです。

まとめ

このように外張り断熱には、大きなメリットもあります。

とは言いましても、これが致命的なことか? と言いますと、実際は内断熱でも充分快適な生活は送れますので、

コスト重視であれば ・・・ 内張り断熱を選択

となって来ます。そして、

性能を選択するのであれば ・・・ 外張り断熱を選択

と言うことになるわけです。

どれを選ぶのが、皆さんにとって最も良いのか? こんなことも、知っておくと、建てたい家のイメージが出来てきますね。

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