「構造計算」のワナ
「構造計算」「構造計算」と、耐震偽装事件以来、何かとテレビや新聞で世間を賑わわせています。
構造計算について
この「構造計算」これが行われているはずだから、世の中の新しい建物は、どれでも安心だ!と、思っていませんか?
たしかに、原則論はそうです。実は一部違うところもあるので、それについて今回は記事にしようと思います。
※ 今回記事にします「構造計算」の必要な基準については、法的には細かく分類されていますが、ここでは複雑化しすぎないよう、わかりやすく単純化してまとめております。
構造計算は全ての建物に対して行われているのか?
と申しますのも、
- 鉄筋コンクリート造(RC造)で2階建て以上の建物
- 鉄骨造の建物で2階建て以上の建物
ならば、まず間違いなく、この構造計算はきちんと行われているはずですので安心です。しかし、
木造2階建てで一定規模以下
の場合は、そもそも確認申請時に「構造計算書を提出しなくて良い」のです。
では、この「一定規模以下」とは具体的にどのくらいの規模でしょうか?
構造計算書が不要な建物の規模
その規模はこのような感じとなります。
- 木造の建物
- 2階建て以下
- 延床面積500㎡以下
- 高さ13m以下
- 軒の高さが9m以下
つまり、普通の規模の2階建て木造住宅 なら、大半がこれに該当するということになるのです。
これが構造計算のワナ
だと思うんですね。確認申請を出す建物は「全て同じように構造計算が行われている」と一般の方々はついつい思ってしまうと思うからです。
構造計算書を提出しなくて良いと言うことは、当然、
法的に義務付けられた構造計算はしなくて良い
ということです。構造計算にはもちろん手間暇がかかりますから、費用が発生します。なのでその分設計料は高くなります。
では、一般的な木造2階建ての住宅は完全に構造については無視なんですか? と言いますと、もちろんそういうわけではありません。
構造計算の不要な建物の構造はどう考えているの?
簡単に言うと、詳細な構造計算ではなく、
- 簡単な計算
- 構造のチェック
だけでOKです、ということなのです。
チェックというのは、例えば、
- 柱の径はこうしなさい
- 土台と基礎部分はこう緊結させなさい
- 耐力壁の量を規定値以上にしなさい
などです。しかし、悪く言えば、そう言った簡略化されたハードルを超えただけでOKだと言うことにもなってしまいます。
しかし、たしかに2階建ての木造は全体重量が軽いと言うこともありますし、実際はそこまで詳細な計算をしなくても、一定の基準さえ満たせば大丈夫だろう、という有識者達の研究の結果でもあると思いますので、あまり心配をし過ぎなくても大丈夫とは思えます。
では、今回の記事を通して何が言いたいのか?と言いますと、このことを知っておいて欲しい、と言うことです。
もし、家を建てる際に、
耐震性能が何よりも大事だけど、木造2階建てにしたい
と言うような場合、建主様側から「構造計算は別途してもらいたいです」と言われなければ、設計者側はまず構造計算はしません。法律で良しとされているわけですから。これは、工務店でもハウスメーカーでも設計事務所でも同じです。
なので、知っておいて欲しいのです。
「選ぶ・選ばない」は建主様の自由です。
構造計算による「より一層の安心感が不要」であれば何の問題もありません。しかし、それが欲しいのにも関わらず「知らないから依頼できなかった」では後味の悪いものとなってしまうと思うのです。
構造事務所に木造2階建ての構造計算(許容応力度計算)の依頼をした場合、事務所にも寄りますが、10万円以下程度から受けてくれるところもあるようです。
※ ちなみに「住宅性能表示の耐震等級」においても、法律上構造計算の不要な建物の場合は構造計算は不要で、一定の基準を満たせば住宅性能評価の等級が付与されます。
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